最も納得できるいじめ関連の本

https://books.rakuten.co.jp/rb/6013954/?scid=we_fcb_upc443
この書のサブタイトルは「なぜ人が怪物となるのか」である。そして、その怪物の正体を明らかにしていく書である。怪物の名は「群生秩序」。「いま・ここのノリを「みんな」で共に生きるかたちがそのまま、畏怖の対象となり、是/非を分かつ準拠点になるタイプの秩序である」 (本書35頁より抜粋) と定義づけている。
 それは一般の市民社会の秩序とは著しく違う。ノリの良し悪しが価値基準で、それにそぐわぬ者はいじめられる。そして、いじめが原因で自殺者が出ても、「あっ、死んじゃった、それだけです」
人を死に追いやっても、罪悪感はない。そういえば、かつて評者が傍聴し続けていたいじめ自殺事件の裁判の途中で、加害者の女子生徒の一人は結婚していた(参考:菊池道人著「津久井町いじめ自殺事件」http://www5e.biglobe.ne.jp/~manabi/4.htmこれも群生秩序ゆえなのであろうか。その他にも、評者の学校生活を振り返り、本書の指摘と通じていたと思われるいくつかの事例が思い出される。
 こうした群生秩序の温床となっているのが、閉鎖空間でベタベタすることを強制する学校制度であり、それはまた戦時中日本の隣組や中国の文化大革命とも通じるものがあるという。
本書では解除キーとして警察の介入を推奨する。この件に関しては、評者は大賛成である。また、教育制度の根本的改革も提案している。改革というものは、副作用的な現象が付随しがちであり、実践には慎重さが求められるかとは思うが、少なくとも、本書著者の指摘は現代人が認識すべきものであり、評者がこれまでに読んだいじめに関する本の中では、最も納得いく書である。
 著者の内藤朝雄氏には心から敬意を表する次第である。(本の博物館館長代理・菊池道人)