辰年に「龍の目の涙」

秘蔵といえばいささか大げさであるが:。筆者宅には大切にしている本がある。

浜田広介作「龍の目の涙」である。昭和16年、フタバ書院刊のものである。表紙はすでに消失している。

筆者の母親の実家で買ったもので、母親が嫁入り道具のつもりで持ち込んだもののようだ。

昔、ある所の男の子が誕生祝に「龍を呼びたい」と言い出した。人々に嫌われ、恐れられていた龍をである。
 不思議がる大人たちに構わず、男の子は龍を呼びに山奥へでかけた。そして、大きな声で呼びかけると、龍は現れた。龍は、皆に疎まれているうちにすっかり心がひねくれていたが、男の子の優しい真心に心うたれた。男の子を背中に乗せてやると、龍の目の中から流れ落ちた嬉し涙が川となり、やがて龍は舟に変わっていった。

 これがこの物語のあらすじである。ぜひとも語り継ぎたい本である。が、楽天やアマゾンなどで検索してみると、在庫は僅少であるという。これからの子供たちのためにぜひとも残しておきたい本であり、大人にも読んでもらいたい本でもあるが:。(本の博物館館長代理・菊池道人)
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「りゅうのめのなみだ」(偕成社・ひろすけ童話絵本 1680円)