これから読書を趣味にしようとしている人にⅡ

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歴史小説の人生ノート』(清原康正著)を読む

歴史小説とは作者と主人公の二重奏である。いや、歴史小説ばかりではない。現代小説もSF小説も、文学、小説と呼ばれるものは全てそうである。

それなのに、いきなり「歴史小説は」と限定的なことを冒頭で言ったのは、『歴史小説の人生ノート』(清原康正著 青蛙房刊)を読み終えた直後だからである。この書には、大佛次郎赤穂浪士
吉川英治宮本武蔵』、司馬遼太郎『龍馬がゆく』、早乙女貢会津士魂』など歴史小説の名作13篇のあら筋と解説、作者の経歴等が記されている。

作者と主人公。二つの骨太な生きざまには、「なるほど」と思う共通項が少なからずあることに気づかされる。作者と主人公の二重奏は、文学観という美しいハーモニーを奏でているのである。13の作品のうち未読の作品の項目を読めば、いつか読んでみようという意欲がわき、既読の作品に関しては新鮮な再発見があるに相違ない。

あとがきで著者は述べる。「歴史には表の顔と裏の顔があると言われる」と。

「史実」として知られている表の顔に何が潜んでいるのかを、どのように探り出していくのか。そこに作者それぞれの文学観、人生観がにじみ出る。よく「歴史認識
なるテーマが外交上の問題になるが、本書で取り上げられた作者13人だけでも13通りの歴史観がある。それを一国共通の歴史観を持とうなど所詮無理なことではないのか。そんなこともこの書を読んで改めて感じた。
(本の博物館館長代理・菊池道人)
*この記事はツカサネット新聞に掲載されたものです。